本物に出会う。
飲食店へ撮影に行く仕事をしているのですが、いろんなお店に行けるのが楽しいんです。
今回、あるレストランだったんですが、オーナーシェフがお一人でされている様子で、席数もそんなになく、シェフもベテランの雰囲気。
こう、何て言うか、カーテンとかテーブルクロスとか若干モケッとしてたり、積み上げられたお皿とか、私物?がカウンターにあって、上手いことそれらは写さないように店内を撮影しないとな~、角度に注意やなーと思いながら。お料理を準備してもらってる間に先に店内の様子を撮ったんですね。
いい悪いではないですよ。何とも気どってない感じ。
そしてライティングのセットをし、いざ料理を出していただいたとき、おったまげました。
「こ、こりゃすごい!」と思って。
何と言うか「 The 完成形」だったんです。
非の打ち所がないってこのことだなっと。
どっから見ても綺麗なんですよ。盛り付けも。反対からも見ても。
「うっ美しいぃ!」とため息の出る前菜。
でも、「撮影だからっていつもと違うものは出したくないんだよ。」っておっしゃって。
これまたカッコいいわけです。
次に出てきたのが、ウニを使ったお料理だったんですが、コンソメジュレみたいなのに埋まっていてガラスの器なんですが、冷えているのでウニが、何だかわかりにくい。
立派な綺麗なウニなのに…
それで苦労したんですけど、やっぱりすくい上げて撮りたい。
勿体ないけど、このお料理を伝えるにはいわゆる「箸あげ」と言われる、スプーンにすくい上げて撮影した方がいい!
とご主人に相談したところ、快く、「もちろんいいよ!」って言っていただいて。
スプーンあげるのも手伝ってくださいました。
それでやっぱこうしないとこの料理は!と思う写真になり。
言ってよかった。
それからも色々こうしたい、これ使いたい、あーしたい!と言いましたら、
全部、いいよ!何の問題もないよ!これも使うか?と言っていただき。
出てくるお肉料理3種類、鴨、牛、仔羊と、全てが本当に無駄がなく美しく正統派で。
どこが見どころか?どこを出すべきか?何を見せるのか?ってことに集中できたのでした。
そう言うもんだと思う。プロって。
私は撮り手なので、お料理を作った人の想いを1枚の中でいかに見せるか?
絞り込むところは絞り込んで、引くところは引いて、ライティングで引き立たせる。
レイアウトとか、見せ方が決まっているから、そこに当てはまって魅せる写真にする。
それが私の仕事。
作る人は、美しく、その人の心情がお皿に詰まったそんな料理を作って出す。
彼は私には期待していなかっただけかもしれないけど、料理を、作品をいい写真にするって共通の方向性があって、集中させてくれたんだと思う。
彼は意識してなかったかもしれないけど、自分の仕事に最善を尽くしたら、次の段階はその人の力量って。
自分の仕事に満足していたら、そこから先のことは、その人の問題って。
そういうスタンス。なのだと思う。
プロだから、それでいいんだと思う。
評価を気にして動いていない!
それは後から追ってくるもので、そこに意識を向けていない。
それがプロだな~と、これが本当の自信だな~と、つくづく深々と思いました。
もっと良く見せなくちゃ!っていうのはきっと余計な概念で。
それがあると要らん労力というか、そこに囚われると本質を見失う。
良いかどうか?他人の目線ではなく、自分の目線で生きている人だと思ったのでした。
それに子育ても人間関係も何でもそうだけど、相手を信じることが結果を生むよな~。
信じるというか、任せるというか、手放すというか。
結局他人との境目、そういうのが確立されていると、結果的に楽で、良い仕事に集中できる。
ってことなのかな~と。
他の仕事でも色んなことがあるけど、おかげで彼の凄さを強く感じることもできて。
色々と勉強になる一週間でした。
そのシェフが撮影が終わってから言ったんですよ。
「やっぱり君はデジタルの時代からカメラを始めたのか?」って。
そんなに若く見えたのかしら??
「いえいえ、まだフィルムしかなかってですよ。」って話から
アナログはいいよな…
物を作るってのは相手見て、その都度手を加えることだって。
料理も相手見て作り方を変えるって。
言っておられました。
そうだよな。
写真も相手見て撮り方を変える。プリクラと違うからね。
その引き出しがたくさんあって、組み合わせ変えてオリジナルの配合をするのが楽しくて大事。
でもこれが儲からんって話をして帰ってきました。
そういうの会社化して京都アニメーションは挑戦して成功していた稀な例だと思う。
近所なんですよ、京都アニメーション。
写真は関係ないですけど、別の撮影で行った先で。
何この幹!この枝ぶり!この苔よ!ってちょっと感動したのでした。
このクビレ!
・京都・大阪・神戸 2019秋の出張撮影
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